2017年9月23日

奥能登国際芸術祭 day1

能登半島の先端の珠洲市全体を使って開催される奥能登国際芸術祭へ。

まずは山の中の若山町から。
一番最初から、不安になるくらい狭い道を抜けたところにある作品「海のこと山のこと -在郷まわりと五芒星」。こちらには竹で作られたドームなどが作られている。かつて海側と山川で物々交換がされていたということで、芸術祭の期間中にリアカーで、海から魚のぬか漬け、山から米を運んで物々交換し、その様子をここのドームで上映するとのこと。

旧上黒丸小中学校での「月を映す花舞台」と「アートキャラバンKAMIKUROMARU」。校庭に舞台とはしごを並べた空間演出の作品。イベントを開催されるそうだが、この空間を見るだけでも楽しい。
構内でもインスタレーションの展示。
また、こちらでお母さんたちがジャガイモをどんどん蒸していてくれて、「食べていってくださいねぇ」といただけた温かさも良かった。
この後も廃校を用いた作品がたくさんあるのだが、それぞれ廃校の碑が立ててあり、廃校になるから取り壊すわけではなく残していくのだという意思を感じた。

またどんどん山を進み北山地区での「上黒丸北山鯨組2017」。
作者の坂巻さんが、海と山との物々交換を題材とした鯨談義を行っておられていて、山の中の田圃を大黒に、海の幸を恵比寿にたとえ、大黒が恵比寿を迎え入れるという作品になっており、休耕田に大漁旗や、家屋には鯨の頭骨のインスタレーション展示。
なぜ山の中で海のもの?となるのが、こういう話を聞くのが里山の芸術祭ならでは。

海側の珠洲市中心地、飯田地区へ。ここには多くの作品が展示されている。
奥能登芸術祭のメイン会場、珠洲市多目的ホールラポルトすず、に車置いてしばらく自転車で回る。
ここにも巨大ガチャガチャ「潮流」。これも物々交換式になっていて、買うこともできるし、入れることもできるようになっていて、人を通じてものが回っていく、がテーマになっている。
入れる際にはコメントを記入することになっていて、「リサイクル」というわけではなく、相手を思う「ものを託す」という心がこもっている感じがいい。

「さいはてのキャバレー準備中」。パリにあったようないつも準備中のキャバレーを再現した作品。波止場にある一見使われていなさそうな建物の中にあり、楽屋に入ることもできたりと、独特な雰囲気を出している。
ホールはカフェになっていて、パエリアとコーヒーを注文。

レトロな映画館 飯田スメル館であった建物での上映型の作品「シアターシュメール」。昭和レトロな看板や椅子などがホールに並んでおり、そこに流れる時間を砂で表現している。
JUENというスナックだった建物での「JUEN光陰」店舗兼住宅のなかを海の中を再現したような魚やカニなどのインスタレーション。
これら作家さんが現場をおとづれてのインスピレーションで作られた印象の独特な雰囲気があった。
商店街の旧店舗で「物語るテーブルランナー珠洲編」。各地で聞いた地元の人の出来事をランチョンマットサイズの布に手芸で絵にした温かみのある作品。解説要らずの生活のシーンが絶妙に切り取られている、見ていて楽しい。

金沢美術工芸大学のアートプロジェクトチーム「静かな海流を巡って」。
明治に建てられた古民家を会場にした、4つの大物の展示。
実際に使われていた漁の網を藍染めしてつくられた暖簾。編み方もこちらのものだそう。
奥に進むと蔵だったところに、蔵に残っていたものが床から天井までよかから網で縛られた、いえの木。なかなかの迫力。
中庭には小さな田んぼが。実際にここで育てているそう。
そして一番奥にあったのがすごかった。能登半島の先端の禄剛崎を中心に海岸線をまっすぐに伸ばした能登半島の地図に、各地にお住まいの方から聞いた思い出話を壁画にした作品。地元の人も楽しめる様子だった。床下には瓦や食器がぎっしりあったそうで、それはそのまま見せていたのも良かった。

海沿いを走って直(タダ)地区へ。
蔵での展示、「触生--原初--」。漆を使った作品なのだが、コレが漆なのかと思う不思議な色あいの作品2点。蔵は明治時代のだそう。よく残して来たなぁ。
「本江寺の倉庫」は、浜辺沿いの倉庫で、倉庫内の桟橋のようなアプローチを進むとみえる海側を開けて海を借景にしたいモービルの作品。
今は道の駅の一部になっている、旧珠洲駅のプラットホームでの展示「善でも悪でもないキオスク」。一見普通にグッツを売っているキオスクにみえる作品。
ここでは少しだけど線路が残っていたりしてちょっと楽しめる。

再び飯田地区に戻って、行きそびれた「小さい忘れ物美術館」。ここは旧飯田駅が会場になっていて、忘れ物でつくられたインスタレーションを展示。旧駅舎と忘れ物という視点が面白い。プラットフォームに傘が刺さっている展示はなんとも哀愁あり、明るくもあり、なんとも言えない良い作品。こうやって使われなくなったところが会場となって、かつてのように人がたくさんやってくるのは良い展示。

車での移動再開。上戸地区へ。「青い船小屋」。ここも海沿いの船小屋を改装した展示。青く塗られた板での能登の風景をイメージしたインスタレーション。少しだけ海が見えるようになっているところも絶妙。
「うつしみ」旧上戸駅舎を用いた作品。ここにいたおじさん曰く、昼間来ても何もわからん。また夜にこよう。結局ここが一番印象に残った作品になった。

宝立地区へ。
能登半島を代表する名勝、軍艦島こと見附島があり、ここには陶器の展示「Drifting Landscape」。もともと大陸の影響を受けて作られた珠洲焼。その珠洲焼と中国の磁器が流れ着いたかのように並べられていた。
現役の銭湯での「混浴宇宙宝湯」。ここはもともと芝居小屋や旅館だったそうで、そのステージや宿泊部屋での展示。建物の作りがかなり複雑で、受付の方が、どうぞ迷ってください、との案内がよかった。お酒で盛り上がったという展示の窓の外には酒屋さんの酒樽の看板。こういう演出がいい。
旧鵜飼駅での「ま-も-な-く」。廃車になった車両を使ってのインスタレーション。車両を一本の光が貫いた作品。これも夜にこないとわからないか?

今日の宿はここから離れているので、今日はここまで。